スキ
俯いた顔をそっと上げると、そこには“友達の眼差し”があった。

出会った時から変わらない、尚人の私を見る目。

それは“恋する瞳”には程遠い。

例え、彼女に出会わなくても、尚人は私以外の人を好きになるんだ。

私は尚人にとって、どこまで行っても友達。

「なんでだろうな?」

悲しそうに、やりきれない言葉を吐く彼。

「こんないい女ふったら後悔するよ?」

「……かもな」

尚人は小さく笑った。

でもわかってる。

気持ちは変わらない。変えられない。

それは、その肩に乗り続ける雪の数が教えてくれる。

その数がどんなに増えたって、私がどんなに払い落としたって、尚人は彼女を待ち続けるんだ。

「……ごめん」

呟くような声は、私の凍てつく心を、少しだけ溶かした。

だから。

私は地面に落ちたプレゼントを拾い、リボンを解いて中身を手渡した。

キーホルダーとかストラップとか、マフラーとか財布とか。

いろんな高級品を見て回って、やっぱり手に取ったのは、500円の何の変哲もないハンカチだったんだ。

私はこれを買う時からきっと、こんな結末を予想していた。

だから、これは“友達の印”

それなら、受け取ってくれるでしょ?

「さっきの、嘘。遅くなるけど、待っててって。高田さんからの伝言……」

「……」

「私の伝言、無駄にしないでよね。ちゃんとキメなさいよ!」

「……あぁ」

尚人の目はもう見れない。

見てしまったら、流しちゃいけないものが溢れ出してしまいそうだから。

でも見なくてもわかってる。

あるのはやっぱり“友達の眼差し”

突然、頬に柔らかな感触が走った。

見ればそれは私が渡したはずのハンカチで。

尚人が私の頬を拭っている。

そんな優しさ、いらないのに。

「寒いから……もう、行くね」

「……あぁ」

私はクルッと向きを変え、尚人に背を向けると、駅に向かって歩きだした。

そして、自分の肩に乗った雪をそっと落とす。

尚人の彼女への想いが変わらないのなら、私の尚人への想いを消す為に。

いつかまた、“友達の眼差し”を、尚人に向けられるように──……。


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