春風に流される
春風に流される
卒業式は前日の雪が溶け始めて、生憎の足元だった。


体育館での卒業式を終え、先生との別れを済ませた後、全校生徒が玄関前に整列し卒業生を見送る。


“蛍の光”のメロディー部分だけが馬鹿デカく流された上に、何とも恥ずかしい見送り方に足取りが重くなる。


ビジャ、ビジャと跳ね飛ぶ雪溶け水が、制服の足元と靴の中を汚し廻る。


「先輩、元気でね〜。東京の大学行ったら、可愛い子紹介して下さいね〜」
「俺も、俺も!!お願いしまッス!

「うぜぇよ、お前らっ!!うわっ、危ねっ」


バスケ部の後輩達が、俺に纏まり付く。


踏み固められたビジャビジャの雪は、凍ってはいないが足元をとられる。


危うく、尻餅をつく寸前だった。


「うわ、ダッサださ。早く行ってくれない?」


「…っせぇつーの!!」


情けない俺の姿に後ろ側から罵声を浴びせたのは、女委員長の牧村だった。


正確には、女委員長だった、が正しい。
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