それなら君を連れて逝く。
こんなに空は青々として、太陽も燦々と輝いていて、気持ちのいい休日。

なのに俺は、何故わざわざ早起きをして親友の為に目的地へ向かっているのか。


「まじで可愛いから!」

「あっそ。」


さっきから、何とかして俺から笑顔を引き出そうと頑張る親友がウザい。


「そう怖い顔するなよ〜。機嫌治せって!別に付き合わなくていんだからさ。」

「当たり前だろ。」


付き合うつもりなんてないし、会うのすら気が乗らないのに。


「まぁまぁ!あ。ここだ!」


二人が店の扉を開けようとしているその時、店内では女の子が二人。これからやって来るであろう男の子について話していた。


「加奈ぁ、私いらないよ?彼氏なんてさ。帰りたい!」

「だぁめ!別にさ、付き合わなくていいんだから。それにさ、めちゃくちゃイケメンなんだよ〜?」

「えー?イケメンじゃなかったら、どーするのよ?」

加奈と向かい合って座っている彼女は、不満げに唇を尖らせて言った。


「イケメンだもん!」

「じゃーイケメンじゃなかったら…相手、殺しちゃうかも。」


そう女の子がこぼした時、すでに彼女の後ろまで歩を進めていた尊の耳にもその言葉はしっかり聞き取れていた。


「…」


目の前の見知らぬ彼女に、俺は殺されるかもしれないらしい。

隣で玲央が俺の顔色を伺っているのが解る。


「そっか。それなら君を連れて逝く。」

「…っ!」


そう答えた俺の声に、目の前の彼女が振り返った。

加奈ちゃんは俺に気づいていたから、くすりと笑っただけだった。


「あの…」


目の前で気まずそうに彼女が口を開いた瞬間。

急に景色が揺らいだ。

まるで世界が墜ちてく様に‥‥
< 2 / 9 >

この作品をシェア

pagetop