ちぎりぐもパラグライダー
ちぎりぐもパラグライダー


「地球滅亡まで、あと二時間。精一杯生きろよ?」



そう微笑んで将大は私の目の前から姿を消した。


見慣れた茶色ロングコートが玄関で揺れ、私はその嗄れた部分を掴んでやりたかったが、お風呂上がりでまだ何も身に着けていない私は思うように動けない。




将大には見えないように、玄関からは見えにくいの死角から頭だけをひょこっと突き出して様子をうかがう。




扉からひょおっと冷たい風が流れ、火照った私の体を包む。それも一瞬。次の瞬間には、もう将大の大きな背中は見えなくなっていた。



残された行き場の失った冷気と私。

なんだか寂しい。声くらいかければよかった。
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