零~ZERO~
9月24日
車で病院に向かう中、2人は無言だった。

貴矢は、
『零が手術終わるまで必ず待ってるから。』

手術は日帰りなので、その辺で時間を潰していると言った。

私は、少し微笑んでいたと思う。
貴矢の不安な気持ちを安心させたくて。



貴矢に手を振って、手術の準備に入った。


私は、肉体は丈夫なので、今まで手術を受けた事が無い。

最初は緊張していたけど、手術台に上がると自然と心は落ち着いていた。

もう、決めた事…。




気がつくと、もうベッドの上だった。
全身麻酔で朦朧とする意識。
手足は言う事をきかない。


だけど、お腹の激痛に、もがいていた。
生理痛どころの痛みでは無い。
じっとしていられない痛み。
麻酔が、まだ効いていたから多少は良かったのかもしれないけど…。



術後、夢の中で、身体を動かされていたのは、覚えている。
その中で、
『お腹が痛いよ…。』
と、うめき声を上げていた気がする。



でも、こんな苦しみに比べたら、お腹の赤ちゃんの気持ちは…?
自分に下された罰だと思い、苦しみに耐えた。


自分の身体が空っぽ。
独りぽっちになったんだなぁ…。
そんな感覚になった。
これで良かったんだ…。
そう言い聞かせた。



術後2時間位、たったのだろうか。
私は自分の足で歩ける様になった。

受け付けで、痛み止めの薬代の会計を終わらせると、駐車場に、すでに貴矢が待っていた。

私よりも、暗い顔をしている。
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