Believe~奇跡の鼓動~
第四章

束の間の幸せ




………おい


………………かり………



「あかり!!大丈夫か!?」

「な、な、なっちゃん!?
きゃあ!近い、近い!!」

あたしは慌ててなっちゃんの腕の中から抜け出した。
心臓があり得ないほどの速さで脈うっている。

「どうした!?苦しいのか!?」

「え?ちが!」

言うが早いか、なっちゃんはあたしの返事などきかず、ひょいとあたしを抱き抱えた。

「先生、俺こいつを保健室に連れて行きます。」

「ん、ああ、そうか」
一方的に大和先生の許可を得ると、あたしを抱き抱えたままなっちゃんは足早に体育館をでた。

「なっちゃん、あたし大丈夫だから!保健室なんていいから」

「だ、め!」
じたばたともがくあたしを、さらにしっかりと抱き直し、なっちゃんはすたすたと歩き続ける。

ユニフォーム姿のなっちゃんと、ジャージ姿のあたし。
あちこちからまばらに聞こえる運動部のかけ声と、遠くから響いてくる吹奏楽の音。
どうやら今回は、放課後から始まるようだ。

それにしても…

「なっちゃん、あの、本当に大丈夫だから」

「突然ぶっ倒れて、苦しそうな顔して、大丈夫なわけないだろ!」

「いやでも」
さっきからすれ違う女子のみなさんが、ひそひそと痛い視線を送ってくださるし、
確かにいきなり倒れたのは驚かせちゃったかもしれないけど、でも、胸の動悸はなっちゃんが原因で、むしろ悪化中なんですけど。
今のこの状態は、俗にいう“お姫様だっこ”。
ああ、ほらまた睨まれてる。








< 70 / 226 >

この作品をシェア

pagetop