ねぇ、センセイ。


「先生こっちこっち」
待ち合わせ場所で大声で先生を呼ぶと、

「うぐっ」

いきなり口を手で塞がれた。

「げほっ。な、何?」

「いきなり"先生"て叫ぶな。周りの目が冷たいだろ。見て見ろよ」

先生はマジで恥ずかしいみたいで。
「今日は名字で呼べよ」
なんて言って、ため息をはいた。

「まっちぃ?」

「お、おっまえなぁ。それはオレのあだ名だろう。懐かしいけどダメ。それも恥ずかしい」

あらあら。先生ってば顔が赤いよ。

「町田さんよりいいじゃん。まっちぃでいこうよ。ね? 今日だけだから」

「………」

「先生!!」

「ったく、お前は。
仕方ないなぁ。じゃあ今日だけだぞ」

「うん!」

何だかんだ言って、先生は優しいね。

「まっちぃ」

「ねぇ、まっちぃ」

「まっちぃてばぁ」

「ムダに呼ぶんじゃない」

「あ?バレた?」

「おもしろがるな」

先生…、
イヤ、まっちぃは私の大好きな笑顔で笑ってくれたんだ。

幸せだな。
今私は、すごく幸せだ。

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