俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
「池谷くん、あたし熱なんてないよ!」
「うん、知ってる」
授業中の廊下は静まり返っていて、あたしはコソコソ声で池谷くんに声を掛けるけれど、
「えええ?じゃあ、教室に戻らないと」
「でも、心の調子がおかしいでしょ、柚」
「え、それは……その……」
池谷くんと先生のせいです、とは言えないまま、昇降口へと到着してしまった。
「柚の下駄箱どこだっけ?」と聞かれて、素直に場所を教えてしまうあたしは絶対にバカだ。
「たまには学校サボるのもいいんじゃね?柚、テスト頑張ってたしな!」
その言葉と共に、ずっとあたしの腕を掴んでいた手が離された。
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