俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~



マイダーリン、改め、先生。


あたしが好きになった人は、無愛想で無表情、氷よりも冷たい態度を持った、十歳年上のお医者サマ。


ただし、目上の人には猫かぶりっぱなしで、聞き分けがいい“優秀な人材”を演じている。



―――だけど。

女の人を泣かせるのが苦手で、慰め方もはっきり言ってあまり上手では無い、不器用な一面があって。


照れたり、笑ったり、困ったり、色々な表情を持った、思わず愛くるしく感じてしまう人でもある。




「先生!あたし迷惑にならないように頑張るんで、アタックしていいですか?」



「迷惑掛けるなよ。それが守れるんならどうぞご勝手に。―――俺をオトせるモンなら、オトしてみろよ」




先生はいつもの無愛想な態度に戻ってしまったけど、その瞳からは怪しいニオイを感じた。


それは、これからのバトルの始まりを表しているようにも見えて。




「絶対に、オトして見せますから!」




この瞬間から、あたしと先生の、長い長い恋のバトルの火蓋が、切って落とされた。




.
< 35 / 266 >

この作品をシェア

pagetop