視線の権利
「ふうん。合コンねぇ?」

「そうなんですよ! だってケイナったら、彼氏にフラレて思いっきり影しょって会社きて、何かあったかってまるっとわかるところをバイトに突っ込まれてサラッと暴露しちゃうんですよ! 訊く方も訊く方ですけどバカ正直に答える方も答える方ですよ!出会いは何だっていいから新しい恋を狩らないと!」


リラックスルームでアキノは一気にまくし立てると、グイッとコーヒーを飲み干した。

お肉嫌いなのに肉食系女子?


オーナーは、白いテーブルの上に両肘をついて細いメンソール煙草の紫煙をふうっと吐き出すと、ゆったりと口を開いた。


「確かにあのメイクも可愛いけど、一週間あなたの見立てで合宿? あなたの事だからいっぱい来る下着のプレゼントも彼氏以外からは使わないだろうけど。ブラのサイズも服のサイズも違うでしょ?」

ぐっ。わかってる。

「それにねぇ、ケイナちゃんって想像以上に肌が弱いの。基礎の手入れと睡眠さえあれば厚塗りしなくても自然な、本物のナチュラルメイクで充分でしょうね」

「でもナチュラルメイクの基本って!」

「何度も何度も、ファンデの重ねづけのナチュラルメイク?
アキノちゃん、あなたはそのファッションもメイクも間違ってない。でもケイナちゃんって童顔でしょ?」


ぐぐっと、な。何も言えない。


「オトコはね、こういうタイプはシャドウにキツい色や濃いラインより、さりげない清楚さを好むのよ」


「ふふふふ」


アキノが小悪魔どころか大悪魔めいた低い声で笑いを漏らした。


「オーナー、燃えてきましたね」


「わっかるぅ~?」


まるで悪代官と悪徳商人のムードだ。


さしずめ私は町娘?

「アキノちゃん、ミサコにサンプルを持ってこさせて。平田主任には『あの』件絡み』って」

「はい! 行ってきます!」


スタスタというよりズンズンリラックスルームを出て行くアキノ。


ミサコさん。

苦手。美人なのに意地悪。

私がマサシと別れたら嬉しそうだった、前に彼女が居た会社の役員と不倫中の社員。で、オーナーの友人。


『あの件』って?
ミサコさんと担当の違う主任が知っていて私が知らないこと?
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