視線の権利
合コンはメンツを考えると半分先輩後輩の交流会、半分合コンだったのかな?

緊張しやすい私のため?
アキノの心くばり?

なんて。うぬぼれかも?

ともかくも。

かなり盛り上がったようで、特に長谷川さん到着後は。
男子からも人望が厚く、女子の憧れのOBみたいで。

合気道部以外の女の子たちも長谷川さんの紳士的な言動に、ポーッとなっていた。

そして二次会へ。


お礼、お礼言わなきゃ!

でも長谷川さんのまわりは賑やかで。

予約していたカラオケボックスに入ったはいいけど。


遠い。


フリードリンクを取ってこようとみんなにオーダーを取ったけど、セルフでやるからいいよ、と笑顔で返された。


ドリンクバーは近くにあったけど、ひとりになると

また


脚に震えがきた。


怖かった。

怖かった。長谷川さんがいなかったら、私……。

落ち着こう
と、あったかいカフェオレをセットしていると

「ケイナさん」

と穏やかな男性の声がした。
急に背後からだったのに自然に振り向く。

そこには長谷川さんがいた。

「すみませんでした。うちの部員が」

謝られてるし。

「いえ! こちらこそ! 危ない所をありがとうございました。それから……」


「それから?」


思わずうつむく。

「みっともない所みせて……」


長谷川さんは切れ長の目を丸くして一瞬キョトンとしていたが、急に笑い出した。

「な、なにか?」

「アキノから聴きましたが、気にしないで下さい」


恥ずかしい!

のはこちらなのに長谷川さんが何故か恥ずかしそうにアイスミルクティーをグラスに落としている。

「あなたは友達思いな方です。そんな人間性のある方は僕は好きですよ」


「あ、あ、ありがとうございます」

言葉が詰まるのは、びっくりする言葉と


長谷川さんって穏やかなのに笑顔らしい笑顔というか微笑みがなくて。


体育会系も色々だろうけど、既に引退してる人でも後輩を動かしてしまうし。


伝説のツワモノだから?
なんか迫力があって。隙がないなあ。

緊張しちゃう。


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