視線の権利

変身!

ピカピカの鏡に映る、化粧っ気もない野暮ったい


私

「思いきって、ちょっと髪の色を明るくしてみようか?」

疲れているはずなのに、明るく弾んだ声のエミコさん。
こちらも元気になれそうな癒し系のお姉さん。
もっと若くみえたけど年齢は30代前半だって。

だからあの微笑みは貫禄なんだね。

エミコさんのアドバイスに頷き、アキノの金髪に近いアゲ嬢の色にならなくていいんだ、と、ホッとする。

「せっかくの長い髪だけど長さはどうする?」

エミコさんの声を割ってアキノがゴシップ記事満載の女性雑誌(持ち込み)から顔を上げ、

「巻き髪できる位まで切って!」
って。

「もーアキノちゃんは。確かにレイヤー入れて切らないと重たいわね。胸の上辺りまでにしておく?」


マサシの好きだった黒髪のストレートロング。
ショートにしたい位。でも、ここはおとなしくアキノとエミコさんにお任せすることに。


合コンも「引き立て役」じゃないみたいだし。


カット、カラーに少しパーマをかけてたら結構な時間に! なんか、悪いなあ。

その間、アキノはチョキチョキと鮮やかなハサミさばき?の音に混じってエミコさんにさんざん愚痴っていた。
エミコさんは前を向いたまま、うんうんとあいづちを打つ。

「3か月くらい前に入ったバイトのコたちさー! ちょームカつんだよー! 馴れ馴れしくすり寄れば許されると思って! サボってんの知ってんだから!」


え? アキノ、仲がいいと思ってた。
彼女の口調って普段から強いし、パーテーション越しの世界に、


私、我関せずで……。
アキノのイライラのゲージが上がったのは

女王様みたいな彼女からしたら、私みたいなトロ助が急に誉められるようになったから、なんて。

私、最低


「どう?」

背後で大きめの鏡を構えるエミコさんの 声で我に返った。


すごい。

髪型、色だけでこんなに変われるの?

派手すぎない明るさのカラー。くせっ毛をクリアしたレイヤーと、艶のあるトリートメントを施しされたキラキラして見える髪は見事に毛先がくるんとブローされて……。

アキノも近寄ってきた。
そして。


小悪魔みたいに鏡越しにニヤッとした。
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