[妖短]空の境界線を越えて
目の前にストンと影が落ちて、
「神山さん」
声をかけられた。

見上げると本を片手に男子が立っている。


クラスメイトの…五十嵐(いがらし)だっけ?

背が高く体格も姿勢も良いのに、
人の目も気にならないらしい垢抜けない格好で、
ぼさぼさと無造作に伸ばした髪とおとなしそうな顔。
さらに、趣味が読書らしく人の輪にもあまり入らない。
嫌われてはいないものの、クラスの中では浮いている存在だ。


予想外の人物に声をかけられてビックリしていると、
彼は向かいの椅子に腰掛けて、
「これ、知ってる?」
本を開いて差し出した。
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