あめとてるてる坊主
 私は顔を上げて、


「おはよう」


 初めて自分から言った。

 どきどき。

 いつもうまく言えなかった挨拶。

 友人の存在は、私を少し強くしてくれた。

 どきどき。


「おはよう」


 彼は、返してくれた。

 それが嬉しくて、顔がほころんだ。

 心臓が踊った。



「あまちゃん?」


 背中越しに聞いた声。

 それに答えるように視線を投げた彼。

 振り向いた先にいた、驚いた顔が満面の笑みに変わったとき、私の心に憶病風が吹いた。



(4)憶病風(完)
【1】ふれふれ坊主【完】
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