伝えきれない君の声


別に、
言い訳するつもりじゃなかった。

本当のこと、
言えばよかったんだと思う。


でも、やっぱり店長に言うと、
からかわれそうだったし……



なーんて、うだうだした考えがさっきから止まらない。


私は本当に、単純な女だと思う。


あの日、
彼がお店に来た、帰り際の言葉。


「君とまた会える口実に、なるから…」


まんまと乗っかってしまった私。

バカみたいに鳴り続ける鼓動。


バカみたいに丁寧に包んだ、
黒いマフラー。


運ばれてきたお冷やも、
緊張で喉を通らない。




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