カナリアンソウル
ひろみは吹奏楽部で私は剣道部なので、帰りの時間を合わせるのは難しい。

そんなときは、学校裏の小道を入って、古びた商店を真っ直ぐ行ったところにある公園に行く。

誰も来る気配の無い草原に静かに腰掛け、制服のポケットに入ってた飴を、大きな音をたててなめた。

それから包み紙を近くのゴミ箱に放り込んだ。

「禁煙中?」

遠くからひろみの声が聞こえた。

「そう。すっごいイライラすんの」

「個人の自由だから別にいーけど、うちは禁煙に賛成」

「え?何か言った?」

怪訝な顔をする私の横に体育座りしながら、顔を傾けるひろみはニコニコ笑っている。

ひろみも元々喫煙者だ。

「それでさ…」とひろみは、さっきと打って変わって表情を変え、続けた。

「どーして言ってくれないの?」

目の前に怒った顔したひろみがいて、私はただバカみたいな顔してた。

「今日卓人に言われて知ったんだから!もうちょいで貴と付き合えそうだったんでしょ?!」

珍しく、一緒に帰ろうなんて言うから何事かと思えば、いきなりお説教が始まった。

「テストが近かったし部活も忙しく、気にする暇が無かった」と言い訳でもしておこうか。
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