カナリアンソウル
ひろみが入院する病院は、隣町の遠からず近からずと言った場所にある。

私の家の近くのバス停からバスに乗って三十分程。

廊下を通る度に見える部屋の中は、どこも自分の部屋のように飾られていた。

「言わなくてごめんね」

「良いの。早く治して」

「今日、学校は?」

ひろみはティッシュを出し、鼻をかんで訊ねた。

「自主早退して来た。つまんないんだもん。貴も後で来るってさ」

私は、周りを見回した。

棚にはタオルやら着替えがぎっしりならんでいる。

「サボり?学校終わってから一緒に来れば良いのに!」

「残念ながら、自主早退は今日が初めてなんだよね」

腹を抱え、ゲラゲラ笑うひろみ。

肩に緩く乗っかる明るめの茶色に染められたロングヘアーが揺れる。

「友達の一大事に学校なんて行ってる暇ないっての!」

「とか何とか言って♪うちいなくて寂しいんでしょ?」

「超うざあ〜い…」

私は眉間にシワを寄せて、口をわざとらしく尖らせた。

これは図星を隠すのと、ひろみは一向に病状を話してくれないから、少し寂しくなったのを紛らわす為。

口を尖らせたところで、何も紛れないことは確かなんだけど。
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