カナリアンソウル
地面には、雪と水が混ざったみぞれが薄らと積もっていた―…

これ初雪かな?とひろみが急に言った。

近頃、どうもひろみは顔色が悪い、休み時間もしょっちゅう手鏡ばかり見ているのは、自分でもそのことを気にしているからだと思う。

もう雪降ってもおかしくないのかな、寒いの嫌だね――

私の正直な声だった。

前方に、卓人が歩いて来た。

この寒さの中汗ばんだ顔をタオルで拭くと、不安そうに顔をしかめた。

「朝練の最中、貴が倒れた」

ひろみが驚く横で、私がまるで反応しないのを見ると「こっち」と肩を落として先を歩き始めた。

「今寝てるから」

保健室の前にきたところで、卓人は足を止めた。

風邪が完治してないのに練習出たんだ。

私はひろみに背中を押され、一人、保健室に入る。

あら、あなたも体調わるいの?と保健師が心配そうに近づいたが、私は重々しく首を横に振った。

ずっと眠り続けていた貴の携帯を借りて、貴の家の番号を探した。

お母さんは、穏やかな口調ながら「いつも馬鹿なので困ります」と静かに怒っている様子だった。

ぐったり沈んだ貴の姿は、何やらもやしが萎れているかのような眺めだった。
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