望遠鏡

深春達がそんなことを話している一方で、
芳隆も同じようなことを友達と話していた。

教室ではなく、階段のところである。


「佐藤さん、もう彼氏できたらしいな」

「あー、らしいな」


芳隆のそっけない返事に、田所裕(たどころひろし)はいぶかしげな表情をする。


「芳隆さー、あんなかわいい子が幼なじみなのに手出さないって男としてどうなんだよ」

「深春は世間一般にはかわいいかもしれないけど、
俺にとっては、幼なじみだし」


そういえば裕も深春に好意を寄せていたのだったかと言葉を続ける。


「あいつと幼なじみをやるのは大変だよ」

「ふーん、そんなもんかねー。
まぁ今回もきっとまたすぐに別れちゃうんだろうし、
そのときは俺もがんばってみようかな」


それには返事をせずに、芳隆はすたすたと歩き出す。

そろそろ授業が始まる時間なのだ。


「あ、待てよ芳隆」

「急がねーと遅れるぞ」


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