気まぐれ猫
昔話
 「そういえばさ、何で優希はこの高校きたの?」
 四人で弁当を食っていたら、いきなり祐輔が聞いてきた。
「な、何!?いきなり」
「いや、中学聞いたら結構この学校から遠いからさ」
「そういうこと。俺さ、医者になりたいんだ」
 ハハっと笑いながら言うと、三人は口をポカンと開けて俺を見た。
「よくある話だよ。ある日、母親が癌になった。それも末期の。田舎の病院じゃ手に負えず、大きな病院のベッドが空くのを待って移ったはいいものの、手遅れだった」「それで医者?」
「そう。あんな田舎でも人手がいれば、少しは何とかなるだろ?」
「……なんて健気なんだ!」
 そう言いながら、宏樹が飛びついてきた。
 とりあえず、しんみりしなくて良かった、とホッとしながら、宏樹を引き剥がした。
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