地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ

一瞬でまわりの音…全てが聞こえなくなった。


聞こえなくなったのは、俺の頭が止まったからだけではなく……

A組の教室中が松沢の発言に静まり返った。



「……松沢さん?冗談はやめようね?」

「……冗談なら……どんなに嬉しいか………」


大きな目に涙を溜め、唇を噛み締める。




「だけど……今日九州から帰って来るはずなんだけど」

「……福岡県警から、杏樹の遺体が見つかったって連絡が来たの…。今は、警視庁の霊安室に移されてる……」



………目の前が真っ暗になったように気がした。




『……陸。今、学園の正門前に車を用意してる。……杏ちゃんに会って来なさい』


電話の向こうで静かな親父の声が聞こえる。



カシャン―――……




力をなくした手から、携帯が床へと滑り落ちた。
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