HEMLOCK‐ヘムロック‐
 やはり、アポロンは界を見つめて妖しげに笑っていた。


「っ!!」


 界はデジカメを切って2人に向かって全力で走り出した。
なおもアポロンは界を嘲笑うかの様に見つめたまま、余裕であった。

 焦りとは違う感情に躍らされ、2人を引き裂く様に界はあさみの腕を掴んで引いた。


ガシッ!!



「キャッ!? あんた、興信所のっ!!? アポロン!! 逃げて!!」


「いいから、とにかくお前はこっちだ!!」


 界はそのまま、アポロンとは逆の方向へあさみを引っ張って行った。
とにかくあさみの身柄を最優先に確保すべきと考えたのだ。


「痛い! 離せバカっ!! アポロン!! アポローン!!」


 求められたアポロンはと言うと、界に引きずられてくあさみを優しい笑顔で、手まで振って見送っていた。

その様子に、あさみは愕然と目を見開く。

界はあさみを掴んだまま振り返り、アポロンに向かって叫んだ。


「この娘の事が済んだら今度はお前の番だからな! 絶対お前らを追い詰める!!」


 アポロンは黙って、ただ「バイバイ」の仕草をしながら界と反対方向に歩いていく。

 アポロンのいくらなんでもな行動に力が抜け、あさみはヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。




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