湯川 英一の、ある一日
それは、いつもの日常から
「あなた、大丈夫?」

彼女が僕の目を心配そうに覗き込んだ。ベッドのスプリングが、キシリ、と鳴る。

「大丈夫って、何が?何もないよ。」
僕はそう言った。だけど彼女は納得しない。

「最近のあなたの小説、怖いわ。」

僕じゃなく、壁に向かって喋っている。僕の目を見るのが嫌いなのか。
僕の小説が怖いって、何だろう。

「怖いのは全然書いて無いよ。ホラーやスプラッターはやらない主義なんだ。」

「そうじゃなくて、普通じゃないっていうか・・・。」

「普通って何だよ?想像を書くのが小説じゃないか。」

僕はキスをしようと、彼女の顔に近づいた。

「イヤ!」彼女は僕を突き放す。
僕はベッドの横の壁に後頭部を打ち付けた。痛い。

「いたたた・・・・・。まったく・・なんだよ・・・・。」
頭に手を当てた。どうやら血は出ていないようだ。

「あのね・・、何を勘違いしてるか知らないけどさ、僕は普通の恋愛小説
しか書いてないからね。誰かと間違ってるんじゃないのかな?」

彼女はケータイを取り出し、僕のサイトを見せつけた。
画面を見る。

作者名は、湯川 英一。僕だ。

しかし、しかし

何かが違う!
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