ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編

2話/迷子の子猫

 少女には名前はなかった。

 ただ、友達の白い竜にはなぜかセスナと言う名前がついていた。

少女は、何時も見知らぬ空間に居た。
 それも、自分で望んで来た分けではなく気づくと居るという形である。

だからいきなり、
「IDを掲示しなさい。
さもなくば連行します」

 と、シスター服の女に凄まれても、洒落た言い訳はできずに元来た道を走り出すしかできなかった。

「あ、お待ちなさいっ。
 そっちは……」

 制する言葉を投げたシスターを完全に無視して少女は、元居た部屋の扉を開けた。

 部屋にはブラウン管が並び、少女には検討も付かない機材と薬品の臭いで埋め尽くされていた。

 それでも少女は、シスターから逃れる為に扉を閉めて鍵を掛けると、まるで慣れたように通気口に潜り込んだ。

 少女はこうやって、見つかる度に逃げてきた。

 少女の敵はなぜか多いのだ。

 勿論、少女はその理由など知る由も無い。ましてや、狙われる義理は全くないのだ。この、不法侵入と言う罪以外に。

 少女は、通気口をセスナ片手に這いずって、降りた部屋で眠る人間を数体見つけ、硝子に入れられた人にならざる存在に少女は目を向ける。
< 18 / 142 >

この作品をシェア

pagetop