ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編

3話/避難パスは短めに

 チェスト・リーム。

 青年には名前があったが、子供の頃から名前を覚えてくれる人物はいなかった。

 だから、なのだろうか、いつしか悪の道を突き進むようになったのは。

 昔から、いじめられっこだった彼は、ラプラス団という奇怪な悪党集団に属する詐欺師こと、ブギル・クラフトに助けられ、ブギルを兄貴分として慕い、名前のない彼こと、神様をある場所へ連れて行くのを手伝っているのである。

(まさか、副っちに当たるとは思わなかったっす)

 ボーガンを丁寧に布でくるみ、神官兵士が陣として構えている場所へと来た彼は、胸中でぼやいて首を振った。

「チェス、あのシスターの名前はなんだったかしらね」

 そんなチェストの背後に現れた背の高い女の問いに、前にのめり込む。

「驚かせないでくださいよ、アリト姐さん」

 そのまま振り向いたチェストの前には、普段のアリトではなくあのシスターに変装した姿があった。

「思い出したわ。
 アリトではなくて、リンメイと呼びなさい」
 
 アリトは小さな笑みを作ると、シスター服の袖についていたボタンを留めた。

「本物はどうしたんっすか」

「秘密よ、秘密。
 さ、仕事を終わらさせてシュイリ様にお土産を持参しましょう」

< 26 / 142 >

この作品をシェア

pagetop