最後の夏-ここに君がいたこと-
店内にはお菓子や玩具が所狭しと並べられている。


店先にある白い長方形の冷凍庫の中では、
数十種の棒アイスが自分の出番を
今か今かと待ちわびていた。


そんなアイスの前では、
今日も幼なじみの浦添陸(うらぞえりく)
が仁王立ちでこちらを睨みつけている。
 
私、山岡志津(やまおかしづ)も負けじと睨み返す。
 

「今日こそは俺が勝つからな」
 
 
「はっ、よく言うわ」
 
 
私が手の指をぼきぼき鳴らすと、
陸もクロスさせて握った手を光にかざして覗き込んだ。
 
 
子供の頃からこの占いを使っているけど、勝率は……言うまでもない。
 
 
山の上からHRの開始を告げる鐘が町中に鳴り響く。
 
 
「志津も陸も、こんなんじゃまた遅刻だわねぇ」
 
 
ふたりの少し後ろの方で木の椅子に
座ったばあちゃんがウチワをパタパタさせながら呟いた。
 
 
ゆるいおだんごから垂れた白髪が、風で揺れて光っている。
 
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