私に恋を教えてくれてありがとう【下】
被害妄想も甚だしい。
逃げたのは私
あの子を葬ろうと即決したのも私
あの人から逃げ出したかったのも私
あの人に償いをしたかったのも私
祐樹に責任を負わせようとしたのも
私、私、私、私…………。
「……っ……ごめんなさいっ……
……ごめん……ごめん……ごめん!!!」
祐樹は何も言わない。
でも身を縮めて小刻みに震える華子を自分の方にクルリと向け
きつく抱きしめ、ずぶ濡れになった頭を垂れ全身で華子を包んだ。
華子のその懺悔は鳴り響く雷鳴の如く。
でも彼はいっこうに怯むことはなかった。
華子は淀む世界の中で彼のみをしかりと見詰め、
腫れた喉から細い細い吐息まじりの言葉が漏れた。
この瞬間世界は止まる。
祐樹は華子の“音”(声)だけを感じていた。