私に恋を教えてくれてありがとう【下】
あの日からずっとだ。





外来の診察介助をした時も



カーテンを閉められ



携帯の番号を聞かれたり、



一緒に帰ることも諦めていない。






何故こんなにつきまとうのか……。





奴との戦いをする度



困惑と非難じみたとっておきの斜めな顔で



お相手をしなくてはならない。







時には手を荒々しく払い


時には大声で“やめてください!”と言い





帰りだって



電車通勤のため駅まで歩かないといけないのだが




そこで捕まらないように


時間をずらし、いつも決まった道で帰らないようにした。





……

日記に牧田の名前を書き続けてもう三か月も経っている。






いい迷惑なのだ。



あの日は私を気遣ってくれて


とっても優しい先生だと思ったが



日に日にエスカレートしていくボディータッチ。





これが決め手になって

この人は単に


“女が好きなんだ”





そう思うしかなかった。


< 43 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop