足跡たどって
Step8: 変な子だよね
かれこれ1.5ヶ月間、掃除当番を務めているけど、今週の掃除当番は、気楽だ。

綿貫先生は、男性なので、女子トイレ掃除のチェックが甘い。

放課後のトイレは、静まり返っている。

「そして、誰もいなくなった」

ちなみに背後で呟いているのは、若菜ちゃんである。

トイレの中には、班長の私と若菜ちゃんしか残っていない。

トイレ当番の週は、班長だけ取り残して、トンズラをするのが、常識なのだ。

しかし、若菜ちゃん。

一緒に残ってくれるのは、ありがたいが、トイレの花子さん的ノリで背後に立つのは、やめてほしい。

「さっき、貴巳君と何話してたのよお。」

恨みがましい声が、トイレに響いた。

「ええと、タカミ君て、どちら様?」

「前田君よ。あんたの隣の席の前田貴巳。」

やっと若菜ちゃんの虫の居所が悪いわけが分かった。

「前田君の下の名前って、タカミっていうんだね。」

しゃれにならない名前だよ。

人を高見から見てるやつにピッタリだ。

「下の名前で呼んでいいのは、私だけだからね。」

「へえへえ。」

そいつは、すみませんね。

頼まれたって、ご免こうむりますよ。

「それで、何を話してたのよ。」

若菜ちゃん、別に小声で話すことないと思うんだけど。

まあ、いいや。

内緒話が好きなお年頃だしね。

「議題は、恋。内容は、般若と鬼の違いおよびひねくれ者と正直者の関係性について。」

「何それ。」

若菜ちゃんは、あからさまに呆れた顔をした。

私だって、君には、呆れているのだよ。

「若菜ちゃんて、なんで前田君が好きなわけ?」

私の質問を聞いた若菜ちゃんは、しばらく沈黙した。

「・・・そんなの分からないよ。」

「え。」














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