優しい雨
スパを出ると雨が降り出した。

だんだん強くなっていく雨の中、彼は慣れた運転で自動車専用道路を飛ばす。

車中で私達はほとんど何も話さず、強くなる雨音だけを聞いていた。

なぜ彼が何も言わないのか、彼の考えていることは大体分かっていた。



自分が何も言わないでいた方が、私が惑わされずに本当の気持ちと向き合えると思っているのだろう。

私に後悔しない選択をさせる為にかれは沈黙を守っているのだ。

私は彼の真摯な気持ちを受け入れて、辛くてもこの先、自分がどうしたいのか自分で選択しなければならない。

周りのせいにせずにすべて自分の思いと責任で決めなくては。

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