【短編】あたしとふたご
あたしとふたご


7年前――……。


「同じ階に引っ越してきた浦田と申します。どうぞよろしくお願いします」


ある日。
あたしの家族が住んでいたマンションの部屋に、綺麗な女の人が現れた。


「あら。わざわざご丁寧にー。清水です」


お母さんが笑顔で挨拶している様子をあたしは、リビングの影からそれを見ていた。


新しく……同じ階の部屋に引っ越してきたらしい。


するとお母さんは目を輝かせた。


「あらぁ可愛い双子ちゃん……莉子」


お母さんは振り返ってあたしに手招きをした。
それを見てあたしはゆっくりと玄関に足を進める。
少し前で足を止めると、お母さんはそんなあたしの背中を押して前に出した。


「ほら莉子(リコ)。同い年だって」


そう言われて前を見ると、同じ顔の双子があたしを見ていた。
するとその双子のお母さんはあたしに微笑みかけた。


「兄の聖(ヒジリ)と弟の望(ノゾム)。よろしくね」


7年前、突然現れた。
おなじかお……ふたつ。



< 1 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop