【短編】あたしとふたご


「大丈夫よ。ひぃちゃんも来ると思ってたからお肉まだまだあるから」


ひぃ君……。


楽しくて忘れていたけど、改めてひぃ君がいないって事にシュンとしてしまう。
するとそんなあたしなんてお構いなしで、お兄ちゃんがお母さんに怒鳴る。


「肉あるならおれにくれよ!」


「ひぃちゃんにも食べてもらいたかったのにな~」


お兄ちゃんの言葉も無視してしゃべるお母さん。


そうだよね。
今頃……ひぃ君、バイト中なんだ。
バイトなんだから仕方ないのに、まだあたし……。
何でひぃ君来てくれないの?って思っちゃってる。



「望ーゲームすっぞー」


ご飯を食べ終えたお兄ちゃんは、自分の部屋から叫んでいる。
それに気付いたのん君は、席を立って歩き出す。


「うぃー。ごちそうさまでした」


両手を合わせてそう言うと、のん君はお兄ちゃんの部屋に入って行った。
あたしはその後お母さんと後片付けをして、自分の部屋に入ると、ベッドに倒れ込んだ。


「フー……」


お腹いっぱいだ。
しばらく食べなくても生きていけるかも。


そう思うくらい食べた。


ボーっとしながら寝返りを打つと、壁に貼ってあるひぃ君との写真が目に止まった。


あれは……。
中学の卒業の時に一緒に撮ったやつだぁ。
あたし髪短いし。
ひぃ君も身長低いなぁ。


フッと笑みを溢して、あたしは仰向けになった。


あたしが……。
自分の事よりのん君の事を優先させるようになったひぃ君の事。
好きになったのはいつごろだったんだろう。


きっと気付いてないんだろうな。
あたしの気持ちなんて。


あたしがどれだけひぃ君の事好きかだなんて。
知らないんだろうな……。


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