【短編】あたしとふたご


「あ、おぅ。今行く。じゃ、よろしくね。莉子」


「あ、ちょっと!ひぃ君!」


あたしは走って去って行くひぃ君を止めようとしたけど、ひぃ君は行ってしまった。


何だよー……。
ただでさえ、クラス別々で話す機会減っちゃってるのに。
ちょっとって何?
……つまんなーい。


あたしはひぃ君が好き。
気付いたら好きになってて。


あたしは、ひぃ君と一緒にいたいから高校一緒にしたんだよ?


まぁ、告ってはいないけどさ。
近すぎて……告る勇気も。
きっかけもないんだ。


あたしは頬を膨らませてムッとすると、はぁ……と溜め息をついた。


勇気があれば……。
勇気がほしいな。
ひぃ君に想いを告げられる勇気が。


また大きく溜め息をついて、あたしはチャイムを聞いてゆっくりと教室へと入った。


ひぃ君ものん君も顔は格好いい方だから。
こうやって……告れないままでいたら、誰かに取られちゃうかもしれないのに。
“好き”が言えないんだ。


幼馴染って困る。
誰よりも近くて、誰よりも性格を知ってるけど。
周りから見ればそれはいい事なのかもしれないけど。


近すぎて……。
伝えられない。


“好き”の2文字が。
どんな長い言葉よりも難しい。
世界で1番難しいんだ。


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