【短編】あたしとふたご


ありがとね。
そう心の中で呟いた直後だった。
のん君がまた振り返ってあたしの方に歩み寄ってきた。


「のん……君?」


何も言わずに俯いたまま近づいてくるのん君にあたしは笑顔を作った。


「どうしたの?忘れ物?」


その瞬間……。
あたしはのん君に抱きしめられた。


え……?


「莉子……」


ドキ。
今、莉子って言った?
いつもりっちゃんって呼んでたのに。


「俺は……ずっと傍にいるから」


耳元で優しく呟くのん君。


ドキン……ドキン。


「ずっと傍で見てるから」


おかしい。
ドキドキが止まらない。


するとのん君はあたしから離れて寂しそうに笑った。


「おやすみ」


そう言って家の中へと入って行ったのん君。


……のん君?


おかしい。
ドキドキが……。
ドキドキが止まらないよ。


何で?
あたし……。
もしかして、のん君の事……。


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