Anniversary.

右手の体温。

………。


お昼を食べ終わって、レストラン街をウロウロ……。


「どこか行くか?」


「ん? “どこか”って」


「ほら、せっかく来たんだし……。 どこか見て回りたいかなーって思っただけだ」


ただ、お昼を食べてケーキを買うだけってのはおもしろくない。




「下の階に色々あるから行こっ」


いっくんの腕を引っ張った。


「そんな急ぐなって、逃げたりしないんだから」


後ろから呆れたような…… 困ったような声が聞こえたが。

……… 気にしない。


だって…… 嬉しいんだもん。


人混みを掻き分けて、下の階へ降りた。


やっぱり人は多い。



「はぐれるなよっ」


あたしが掴んでいた、いっくんの手が動いて。


「離すな、よ?」


「うん……」


あたしの右手を握った。





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