ティアラ2
濡れた手を見ると、黒い石がいっぱいついていて。

「……汚い」

最悪最悪最悪、って。そんな言葉しか出てこない。


立ち上がるのもだるかった。

人の目すら、気にならない。


駅はもう目の前。人通りだって多い。

なのに、もうどうでもいいの。


「……」

急に視界のぜんぶが青く染まった。同時に映ったのは、黒くて大きな靴。

ゆっくり顔をあげると、見覚えのある顔がそこにあった。

「……透吾」

なんでこのひとは、いつも突然、現れるのかな? 紺色の傘で覆われながら、ぼんやりと彼を見上げる。

心配そうに、転んだままのあたしを見ていた透吾は、静かに口元を緩め……。

「大丈夫?」

同じようにしゃがみ、手を差し伸べてくれた。

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