ティアラ2
「そんなとこに10円なんて落ちてないよ」

「……」

前言撤回。やっぱこの人、なんかイヤ。

掴みかけた手をパチンと叩く。拒否られた彼は、苦笑いで「いてぇ」と呟いた。

「こんなとこで何してんの?」

落ちた私物を拾っていると、目の前に定期券を持ってきた。それを奪い取り、あたしはつんとした態度のまま、聞き返す。

「それはこっちのセリフ。またストーカーですか?」

嫌味っぽく言ってやった。すると彼は「いやいや」と笑いながら、道路の向かいにあるスーパーを指でさす。

「買い物。俺んち、この近くだから」

にこにこ笑ったひまわりの顔。スーパーのマークを見て、思わず口元がにやけた。

「いつもしゃれた格好をするくせに、こんな安っぽいスーパーにも行くんだ」と。
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