ティアラ2
たまに、この人を兄だと思いたくないときがある。

「わかったわかった。もういいよ、部屋に戻って。あたし着替えたいから」

兄はこういう話をし始めたら止まらない人だから、「大丈夫?」なんて一度でも心配すれば、数時間、この話を聞かなきゃいけないはめになる。

それを避けたいあたしは、早く彼を追い出そうとした。

ほんとに、あの人たちと同い年だとは思えないな。

何年も浪人生で、やっと大学に受かったと思えば、バイトもせずに変なフィギュアとか集めてるし。

あきらめてくれたのか、うつむき加減の兄は惜しむようにチラチラあたしを見ながら、部屋を出ていった。

「はぁっ」

やっと着替えられる。そう思って、再びワンピースに手をかけたとき、またドアが開いた。

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