ティアラ2
「篤紀ぃぃ!」

「んだよ、お前。帰ったんじゃ……」

2段飛ばしでまたのぼる階段。フロアにいた彼は、迷惑そうな顔で振り返る。

「見て、これ!」

そばに寄って、仁王立ちするあたし。

「あっ……お前、なに剥がしてんだよ」

「えー、だってドアの声がうるさいんだもん」

数分、あの体勢で張り紙を眺めていたけれど、前に出た頭に反応してドアが開くから、ムカついて破っちゃった。

って、そんなことよりも!

「篤紀、あたしもここで働きたい!」

これはもう神様のお導きにしか思えない。

きっと、会う時間がないあたしたちへのプレゼントなのよ。篤紀が一人暮らしの資金を貯めるなら、あたしはここでふたり分の旅行代を稼いでやる!

篤紀はにっこり微笑んだあたしに、あ然としていた。しばらくして、彼は呆れた態度でため息をつく。眼鏡のずれをなおしながら……。
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