ティアラ2
「百瀬さん」
背後から聞こえる、彼女の声。あたしはなんの警戒もせずに、ぼうっとした顔で振り向いた。

いまはあんたなんかと話す気分じゃないのよ。そう思いながら、うんざりした気持ちでいたけれど。

「……っ!」
そこにある表情に驚いて、目を一気に見開く。

いつもとは全然ちがう顔。片手を腰に置く彼女は、悪魔のような目であたしを見つめていた。

「さっき……ちゃんと答えてなかったわよね」
声のトーンは変わっていない。でも、わずかに話し方が冷たい。

一体、何を言うつもり?
別人のような彼女を前にして、小さな恐怖を抱く。

彼女はにんまりと微笑んだ。

「楽しいよ」

やっと目にした彼女の素顔。
それは想像していたよりも醜くて、あたしは言葉を失った。

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