ティアラ2
泣かなくちゃいけないってわけじゃないけれど、なんで涙が出てこないんだろう。
どうしてあたしは、こんなところに座ってぼんやり空を眺めてるのかな?

「……はぁ」
ため息は出るのに、頭はちゃんと働いていない。さっきの篤紀の姿すら、思い出すのも難しいの。

青みを失った夕方の空は、うっすらと白い月を浮かべている。けれど、それは目を凝らさないと見つけられないほどで、真夜中のようにまぶしい光は放たれていない。

ひざを抱えてしゃがんでいたあたしは、疲れた首に手を置きながらうつむく。すると、少し離れた所から車のドアが閉まる音が聞こえ、間もなくしてあたしの体は大きな人影に覆われた。
< 291 / 527 >

この作品をシェア

pagetop