ティアラ2
振り払われることを覚悟して、そっと手を伸ばす。引き留めないと帰ってしまいそうだから。

もう少しで手が届く……そう思っていたとき、重ね重ね、嫌なパターンが続いた。
「あ、いたいた。おーい、忘れ物!」
いまいちばん、ここに現れてはいけない人物の声。

ゾッとするあたしは、全身に力を入れた。
いっぽうの篤紀は、何を言っても無視だったのに、その声にはすぐ反応したの。

「これがないと困るだろ?」
篤紀と同じように目を向けると、さっきまで一緒にいた透吾がにんまりと笑っている。

手にはあたしの携帯電話。……篤紀にもらったピンクのストラップが、ブラブラと揺れていた。

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