ティアラ2
そしていきなり……。

「惚れちゃった? 透吾に」
腰を曲げて顔をのぞき込んできた。
「ほ、惚れてなんかっ」
慌てて否定する。でもアカネさんはニヤニヤ笑うだけで、あたしの言葉を信じていないみたいだった。

スッとあたしから離れる彼女は、「モテるなぁ、ほんとに」とつぶやきながら、ドアのほうへと歩いていく。「違いますって」と何度も言ってるのに、全然聞いていない様子。

ほんとにもう、と頬を膨らませた。すると彼女は扉を開けて、向こうをむいたままこう囁いてきた。

「多分、そのボトルは……本命の子が置き忘れたものじゃないかな」
「え?」
「お疲れ様ぁ」
「ちょ……アカネさん!」

言うだけ言って、去っていく彼女。
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