ティアラ2
かたくなに閉じられていた口が、動く。

「…………」

返ってきた言葉に放心して、全身の力が抜けた。


車のドアを開けるまで、透吾はあたしが戻ってきたことに気づいていなかった。

「おかえり。話してきたか?」
助手席に置いてある袋を後ろへどかして、結果を聞いてくる。コンビニで買ったものだろう。透吾は車の中でお茶を飲んでいた。

助手席に腰掛けるあたしは、静かにシートベルトをおろし、彼に笑顔を見せた。
「うん。……ダメだった」

篤紀の気持ちは何も変わらなかった。……もう彼の目は、あたしに向いていない。


“ああ、終われるよ”

冷静にそう言い切る彼は、腕を放すと、すぐに歩き出した。一度も振り返らず、離れていったの。


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