元気あげます!

一方、千裕の屋敷内では、高田と幸恵が壁越しに千裕と押しかけ婚約者の湯浅かおりの会話を立ち聞きしていました。



「どちらの名家のお嬢様かと調べさせていただいたんですが、いっこうに素性がわからないんですよねぇ。湯浅さんは・・・」


「かおりって呼んでください。もうすぐ私はあなたの正妻になることが決定しているんですから。ご本家からきいておられるのでしょう。」



「ええ。きいていますけどね・・・。あなたがどうして僕のことを知って、僕の妻になりたいと思ったのかをお聞きしたいですね。
初対面の相手といきなり結婚するって抵抗がないとは思えなくてね。」




「理由は簡単なことですのよ。千裕様は財界でもトップクラスの有名なお方。
仕事はよくお出来になることはもちろん、容姿端麗、スタイルもよくて三崎グループのポスターでもおなじみ。
そんな方の正妻になれるのですよ。断る女の方がどうかしていますわ。おほほほ。」



「は、ははは・・・。三崎のポスターのモデルなんですがね・・・あれは僕じゃありません。弟の淳裕です。」



「へっ・・・・・」



「淳裕とお間違えになっておられるなら、弟を紹介しますよ。
今、あなたがおっしゃったとおり、仕事もできるし、容姿端麗、スタイル抜群。
モデルもやってますから・・・弟はね。」


「いえ、私はご本家から千裕様と結婚するようにと、召使とともにやってきたのです。
政略結婚でも、後悔などしない覚悟できているんですからね。」



「そうですか。覚悟はあると・・・おっしゃるわけですね。
ま、式までまだ時間もあります。
屋敷内を好きに使ってかまいませんので、ご自由にお過ごしください。

ただし、僕の書斎と寝室へはうっかり入るとトラップが発動する仕掛けになっていますので気をつけて。」


「トラップですって?」


「ええ。僕は化学の教師もやってるんでね、いろいろ実験するものを作っています。
先日もうっかりな執事が書斎に迷い込んでしまって、危うく還らぬ人になるところでした。
では、僕は明日早いので、おやすみなさい。」



< 105 / 143 >

この作品をシェア

pagetop