ライラックの咲く頃

優しい。
優しい。

口いっぱいに懐かしい味が広がった。
まるで今まで私の舌にこびりついていた化学調味料の味をすっかりとってくれるような優しい味がした。

優しい。
優しい。

涙が溢れた。
自分でもしらぬ間に。

鼻をすすりながらミントのカレーを食べた。

ミントは何も言わなかった。

びっくりもせずに優しい笑顔をみせた。

ミントが何も言わないでくれたから、私も安心して泣いた。
カッコ悪いとか思わずに思いきり泣いた。

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