本当に愛おしい君の唇
第7章
    7
 ブルゴーニュ産の年代物のワインはグラスに注いで呷ると、味がよかった。


 やはり高級酒特有の味わいがある。


 治登が一杯、また一杯と飲んでいると、裸の体にバスローブ姿の直美も飲み始めた。


 最初は治登も彼女がきっと酔っ払うと思っていたが、実際目の前に酒ビンがあると、ソフトな外見からはおよそ想像もつかないぐらい飲むのだ。


 治登は直美が普段から何かとストレスを溜め込んでいるのを改めて知った。


「たくさん飲めよ。ちょっと高いワインだけどな」


 治登の言葉に促されるがままに、彼女が飲みない口であるにも拘(かかわ)らず無理して飲む。


 直美はその気になれば、結構酒を飲める性質らしい。


 治登が自分のワイングラスと彼女のそれに酒を注ぎ分けながら、


「今夜はいい夜になりそうだね」


 と言った。


「ええ。とってもいい気分だわ」
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