本当に愛おしい君の唇
第11章
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「君、それ言い過ぎなんじゃないか?」


「言い足りんぐらいやわ。専務、人事言うのは大事な問題でっせー。妥協したらあかん」


「そりゃそうかもしれないけど……」


 治登は言葉尻に微妙に含みを残しながら、飲み会の席上に置いてあったワインをグラスに注いで飲み始めた。


 昼間から酒が入ることは滅多になかったのだが、治登も飲むときは飲むのだ。


 思わず人事の話になってしまったので、治登がいったん抑え込んでいた感情をもう一度出すように、


「君はルーデルの内情や古賀原のことを知ってるのか?」


 と訊いた。


 もちろん、大園は何もまともなことを一つとしてしない古賀原のことを知っていて、言っているものと思われる。


 どこかで社から他社に機密が漏れているのだ。


「大園君」
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