本当に愛おしい君の唇
第15章
     15
 新宿駅東南口には大勢の人が出入りし、絶えず行き来している。


 治登は約束の刻限である午後八時になるのを待ちながら、前方をじっと見据えていた。


 今日も丸々一日仕事に追われて疲れたなと思いながら……。


 やがて時間が来、直美がやってくる。


「治登さん」


「ああ。来たね」


「今から食事するわよね?」


「うん。俺も腹減っちゃって」


 確かに空腹を覚えていた。


 午後零時を回ればランチに行くのだが、治登は午後一時にはすでに専務室にいる。


 一商社の専務に過ぎないのだが、治登自身、自覚があった。


 人事のことはすでに樺島から聞いている。

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