本当に愛おしい君の唇
第16章
     16
 新宿の洋風料理店<セルビ>は時刻が遅いにも関わらず、込んでいた。


 これが流行っている店の雰囲気なのだろう。


 店内に入ると、あちこちから肉料理の美味しそうな匂いとニコチン臭がしていて、混じり合い漂っていた。


「お二人様で?」


「ああ」


「奥のお席へとどうぞ」


 店指定の制服を着たウエイトレスが案内してくれる。


 治登も直美もその女性店員から奥へと通された。


 ゆっくりと歩きながら、治登は締めていたネクタイを緩める。


 今からがリラックスタイムだと思いながら……。


 直美のスーツからは石鹸系統の甘い香水の香りが漂ってきていた。


 清潔な証拠だ。
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